歯周病治療
歯周病とは

歯周病とは、歯を支える歯周組織(歯茎・歯槽骨など)が細菌感染により破壊される慢性疾患です。
歯周病は20代から始まり、静かに進行する「サイレントキラー」です。
20代・30代頃から問題になってくるのが歯周病です。稀に10代で侵襲性歯周炎を発症する方もいます。先天性の疾患がなく、10代未満で歯周ポケットが浅く健康でセルフケアの上手な方は、セルフケアのみでも予防が可能な場合があります。初診時に丁寧に検査し、リスクをしっかりご説明します。
しかし、多くの場合、セルフケアのみ(歯磨き・フロス・歯間ブラシ・マウスウォッシュ)では十分な予防はできません。歯ブラシの毛先は歯茎の下1〜2mm程度までしか届きません。健康な歯肉溝は1〜2mmですが、歯周ポケットが深くなると(4mm以上で注意が必要、6mm以上は重度の目安)、その中は歯科医院で歯科医師・歯科衛生士による専門的なお掃除でしか確実にケアできないからです。
歯のメンテナンスは「ただの歯石取り・着色取り」ではありません。バイオフィルム管理が本質です。
バイオフィルムとは?
バイオフィルムは「細菌のマンション」です。口腔内の細菌が粘着性の膜を形成し、内部に守られて増殖します。抗生物質などのお薬はほとんど届きません。口腔内には数百種類の細菌が共存しており、主な悪玉菌は虫歯菌と歯周病菌です。これらはパワーバランスを取っており、虫歯が少ない方は相対的に歯周病になりやすい傾向、その逆もあります。
こんな症状はありませんか?
- 出血
- 腫れ
- 口臭
- 歯の動揺
- 退縮など
上記のような症状に1つでも当てはまる方は、歯周病(歯槽膿漏)が原因となっている可能性があります。
また、初期は自覚症状が乏しいです。
歯肉炎について
歯周病の初期段階で、炎症が歯肉に限局したものを歯肉炎と言います。
赤み、腫れ、ブラッシング時の出血などが見られることが多いですが、適切に対応すれば可逆的です。
歯周病の原因
主な原因はプラーク(バイオフィルム)中の歯周病菌です。喫煙、糖尿病、ストレス、遺伝的要因、不十分な口腔衛生などがリスクを高めます。
口腔内を完全に無菌化することはできません。理論上は可能でも、常在細菌が適度に存在することで侵入した病原菌を淘汰したり、免疫システムを微弱に刺激して機能を保つ役割があります。生まれた時はほぼ無菌ですが、すぐに細菌が定着します。虫歯と歯周病は感染症です。稀に虫歯になったことがない方もいらっしゃいますが、長期間歯科医院に通っていない場合は特に危険です。
歯周病菌は「サイレントキラー」と呼ばれます。虫歯は進行すると痛みが出やすいですが、歯周病の怖いところは痛みがほとんどなく進行することです。主に慢性炎症ですが、稀に急性化して痛みを伴うケースもあります。
主な原因菌
——レッドコンプレックス
歯周病の進行に特に強く関与するのが、レッドコンプレックスと呼ばれる病原性の高い3種の細菌群です(Porphyromonas gingivalis、Tannerella forsythia、Treponema denticola)。これらは酸素の少ない深い歯周ポケットを好み、互いに協力して組織破壊を進めます。専門的なスケーリングでこの環境を改善することが、進行抑制の鍵となります。
歯周病は「口の中だけの病気」ではありません——全身への影響
歯周病は全身疾患との関連が明らかになっています。慢性炎症や細菌・毒素が血流に乗ることで、糖尿病(インスリン抵抗性の悪化、HbA1cの改善が歯周治療で報告される双方向の関係)、早産・低体重児出産のリスク上昇、心血管疾患、誤嚥性肺炎などとの関連が多数の研究で示されています。歯周病をコントロールすることは、全身の健康を守ることにもつながります。
近年はハラスメント意識の高まりにより、周囲の方が「口が臭い」と指摘しにくくなり、他人から気付かされる機会が減りました。自覚症状が出にくい分、定期的な専門チェックがますます重要です。
諸外国(ドイツやデンマークなど)では、予防的な歯科ケアの重要性が高く認識され、定期的なクリーニングや検診が保険・補助金制度で積極的に支援されています。それほど「歯を守るための定期管理」は世界的に重視されているのです。
歯周病のセルフチェック
下記のような症状がある場合は受診をおすすめします。
- ブラッシング時に出血する
- 歯茎が腫れる・赤くなる
- 口臭が気になる
- 歯がグラグラする
- 歯茎が下がって歯が長く見える
- 膿が出る
歯周病になりやすい人の特徴は?
喫煙者、糖尿病患者、高齢者、口腔衛生が不十分な方、家族に歯周病既往がある方、免疫力が低下している方など。
歯周病の治療について

より長く歯を守り、将来の歯の喪失を防ぐために
——当院の科学的根拠に基づく歯周病治療
当院の歯周病治療は、高品質な超音波スケーラーと手用スケーラーを組み合わせて行います。治療用ユニットにはすべて、精密な設計の超音波スケーラーを搭載しています。高い技術と設計により、歯や歯茎へのダメージを最小限に抑えつつ、効率的に歯石やバイオフィルム(細菌の膜)を除去できるのが特徴です。低侵襲な振動と出力の自動調整により、痛みを軽減し、患者さんに優しい治療を実現しています。
歯周病治療で大切なのは、「原因である細菌性バイオフィルムを確実に除去し、再形成をコントロールすること」です。私たちにお任せください。
歯周病と抜歯
重度の動揺で保存が困難な場合、根分岐部病変が高度な場合、歯周治療後も改善が期待できない場合などは抜歯を行った方が良いケースもあります。症例ごとに慎重に判断します。
歯を抜かずに治療する
メリット・デメリット
メリット
咀嚼機能や見た目の維持、隣接歯への影響軽減
デメリット
治療期間が長くなる場合や、予後が不安定な場合がある
歯を抜いた場合の
メリット・デメリット
メリット
炎症源の除去、他の歯への負担軽減
デメリット
咬合の変化、補綴治療が必要になること
歯周病治療の流れ
診査・精密検査
歯周基本治療(ブラッシング指導・スケーリング・ルートプレーニング)
再評価
必要に応じて歯周外科
口腔機能回復治療
SPT(継続管理)
保険治療と自費治療の比較
保険治療は費用を抑えられる反面、使える材料や治療の精密さに制限があります。一方、自費治療は費用は高くなりますが、使える材料や治療法に制限がない為、より精密で長持ちしやすく、見た目も自然に仕上がる治療を選べます。
保険治療の場合
検査内容、検査方法
基本的な問診・視診・触診、レントゲン撮影、歯周ポケットの検査などが中心です。 病状を把握するための必要最低限の検査はしっかり行えますが、より詳細な細菌検査や特殊な機器を使った精密な検査は限定されます。
治療方法
虫歯の場合は、保険で認められた白いレジンや銀歯(金属の詰め物・被せ物)、条件付きのCAD/CAM冠などを使用します。 根管治療(神経の治療)も保険で可能ですが、使用できる薬剤や器具に制限があります。 歯周病治療では、歯石取りや歯茎のポケット内の清掃が中心です。 「治療として」行う場合は保険が使えますが、純粋な予防目的のクリーニングは原則対象外です。
治療期間
1回の通院でできる処置量に制限があるため、複数回に分けて治療を進めることが多くなります。 軽度の虫歯は1〜2回、神経の治療を伴う場合は数回〜数週間かかることが一般的です。 費用は自己負担が1〜3割で済むため、経済的な負担は軽めです。
保険治療の限界や制限
使える材料が限られるため、銀歯は目立ちやすく、白い材料でも経年で変色や劣化しやすい場合があります。治療にかけられる時間や、マイクロスコープなどの精密機器の使用が制限されることがあります。また、歯を削る量を最小限に抑えたり、再発しにくい精密な治療を行うには限界があります。見た目や耐久性を重視したい場合、満足度が低く感じられることがあります。
保険治療のメリット・デメリット
| メリット | ・費用が安く抑えられる(自己負担1〜3割) ・基本的な虫歯治療や歯周病治療はしっかり受けられる ・全国どこでも同じ基準で治療が受けられる ・緊急時や応急処置にも対応しやすい |
| デメリット | ・使える材料が限られ、銀歯が目立つ ・白い材料でも変色しやすい場合がある ・治療の精密さや時間に制限があり、再発リスクが相対的に高くなることがある ・見た目や耐久性を重視した治療が難しい ・予防目的のケアは原則保険適用外 |
自費治療の場合
自費治療では、保険の制限を超えて「より精密で、長持ちしやすく、見た目も自然な治療」を選ぶことができます。
検査・診断
より詳細な検査や、必要に応じた高精度な診断が可能です。病状をより正確に把握し、最適な治療計画を立てやすくなります。
治療方法・材料
セラミックやジルコニアなど、天然の歯に近い色調・透明感で変色しにくい材料を使用できます。虫歯を最小限に削り、精密にフィットする詰め物・被せ物が可能です。根管治療ではマイクロスコープやラバーダムを用いた精密な治療を行いやすく、再発リスクを下げられます。歯周病治療でも、より丁寧で時間をかけたケアが可能です。
治療期間・仕上がり
1回の治療に時間をかけられるため、通院回数を減らせる場合もあります。 仕上がりの精度が高く、咬み心地や見た目の満足度が上がりやすいのが特徴です。
自費治療がおすすめの方
- 見た目が自然で、銀歯のように目立ちにくい
- 材料の耐久性が高く、再治療の可能性を抑えやすい
- 歯を削る量を最小限に抑えられるケースが多い
- 精密な治療により、長期的に歯を残しやすくなる
- 治療の質や快適さを優先できる
費用は全額自己負担となりますが、「できるだけ長く自分の歯を残したい」「見た目を重視したい」「再治療を減らしたい」という方には、自費治療を選択されるメリットが大きいです。
当院では、患者さんのご希望やお口の状態に合わせて、保険治療と自費治療の両方をご提案し、しっかりご説明した上で選択いただけます。ご不明な点はお気軽にご相談ください。
自費治療のメリット・デメリット
| メリット | ・見た目が自然で、銀歯のように目立ちにくい ・材料の耐久性が高く、再治療の可能性を抑えやすい ・歯を削る量を最小限に抑えられるケースが多い ・精密な治療により、長期的に歯を残しやすくなる ・治療の質や快適さを優先できる ・1回の治療時間を十分に確保できるため、丁寧な仕上がりが期待できる |
| デメリット | ・費用が全額自己負担となり、保険治療より高額になる ・医院によって料金設定が異なる ・すべてのケースで保険治療より明らかに優れるわけではなく、症例によっては保険治療で十分な場合もある |
歯周病の治療法
① スケーリング
歯の表面や歯茎の溝(歯周ポケット)に付着した歯石・プラークを、専用の器具で除去する処置です。歯周病治療の基本となる重要なステップです。

スケーリングの必要性
歯石はブラッシングでは除去できず、細菌の温床となります。放置すると炎症が進行し、歯を支える骨が溶けていきます。スケーリングにより原因を取り除くことで、炎症の改善が期待できます。
治療で期待できる効果
歯茎の腫れや出血の軽減、口臭の改善、歯周ポケットの浅化、炎症の沈静化などが期待できます。軽度の場合はこれだけで大きく改善することが多いです。
治療の流れ
部位によって複数回に分けて行うことが一般的です。
診査・検査
必要に応じて麻酔
超音波スケーラーやハンドスケーラーで歯石除去
研磨・洗浄
再評価
② 歯周組織再生療法
歯周病で失われた歯周組織(骨や歯根膜など)を、可能な範囲で再生させることを目的とした治療です。日本歯周病学会のガイドラインに基づき、適応を慎重に判断して行います。

どんな症状の時に行う治療?
垂直性の骨欠損(特に2壁性・3壁性)や、根分岐部病変(2度程度)など、再生が期待できる形態の欠損がある場合に適応となります。歯周基本治療後に再評価を行い、適応を判断します。
治療で期待できる効果
歯周ポケットの減少、アタッチメントレベルの改善、骨の再生などが期待できます。すべての症例で完全に元に戻るわけではありませんが、フラップ手術単独より良好な結果が得られる場合が多いとされています。
治療の流れ
喫煙者では効果が低下するため、禁煙が強く推奨されます。
歯周基本治療で炎症をコントロール
適応判断
外科的に歯茎を開いて再生材料を応用
縫合
経過観察・メインテナンス
③ 歯周外科治療(フラップ手術)
歯茎を切開・剥離して、直視下で歯根面の歯石や不良肉芽を徹底的に除去する手術です。歯周基本治療で改善しきれない深いポケットに対して行います。

どんな症状の時に行う治療?
中等度〜重度の歯周病で、深い歯周ポケットが残り、骨の吸収が進行している場合に適応となります。
治療で期待できる効果
歯周ポケットの減少、炎症の改善、清掃しやすい環境の獲得が期待できます。歯を残すための重要な治療の一つです。
治療の流れ
術後は安静と丁寧なケアが必要です。
麻酔
歯茎を切開・剥離
歯石・不良組織の除去
必要に応じて骨の形態修正
縫合
消毒・経過観察
④ 骨移植
歯周病で失われた骨の欠損部に、自家骨や人工骨などの移植材を補填し、骨の再生を促す治療です。フラップ手術と併用して行われることが多いです。

どんな症状の時に行う治療?
垂直性の骨欠損があり、移植材を保持できる骨壁が残っている場合に適応となります。
治療で期待できる効果
骨量の回復、歯の支持力の向上、歯周ポケットの改善が期待できます。骨壁数が多いほど良好な結果が得られやすいとされています。
治療の流れ
再生材料と組み合わせる場合もあります。
フラップ手術に準じて歯茎を開き
欠損部を清掃
移植材を補填
必要に応じて膜で覆う
縫合
経過観察
⑤ 歯周組織誘導法(GTR)
特殊な遮断膜(GTR膜)を用いて、歯肉の上皮や結合組織が先に入り込まないようにし、歯根膜や骨を作る細胞を優先的に誘導して歯周組織の再生を図る方法です。

どんな症状の時に行う治療?
垂直性骨欠損(特に2壁性・3壁性)や、2度の根分岐部病変などに適応となります。日本歯周病学会のガイドラインでも、フラップ手術単独より推奨される場合がある治療です。
治療で期待できる効果
アタッチメントレベルの改善、骨の再生、歯周ポケットの減少が期待できます。適応を正しく選べば、良好な結果が得られやすいとされています。
治療の流れ
口腔衛生状態が良好であること、非喫煙者であることが成功の重要な条件です。
フラップ手術に準じて歯茎を開き
歯根面を徹底清掃
GTR膜を設置
縫合
膜の種類により後日除去する場合あり
経過観察・メインテナンス
⑥ 精密歯周病検査
詳細な検査により、ステージやグレードを評価し、個別の治療計画を立てます。

検査の流れ
問診
口腔内診査
プロービング
(全歯のポケット測定・出血確認)
動揺度検査
レントゲン撮影
プラークスコアなど
診断・治療計画の説明
歯周病の予防について

日本歯周病学会の『歯周治療の指針』では、歯周病治療後のメンテナンス(SPT:Supportive Periodontal Therapy)の間隔について「一般的に1〜3ヶ月ごとのリコールが望まれる」と示されています。研究では、専門的な除去後、バイオフィルムが再形成され病原性を帯びてくるのがおおむね3ヶ月前後であることが報告されています。3ヶ月ごとにリセットすることで、細菌が増えきる前にコントロールできるのです。スウェーデンの長期研究などでも、定期的なメンテナンスを受けた群で歯の喪失リスクが大きく低下することが示されています。
治療後に起こりうる変化
歯周病治療により、骨が溶け続けるのを抑制できます。一方、炎症で腫れて大きくなっていた歯茎が引き締まることで、歯茎が下がって見えることがあります。これは病状改善の過程で起こる自然な変化で、適切なメンテナンスで安定を目指します。
当院では、患者さん一人ひとりの状態・リスクに合わせた丁寧な検査と説明、低侵襲で効果的な専門ケアを提供しています。「ここならしっかり治してくれそう」「長く自分の歯を守れそう」と感じていただけるよう、エビデンスに基づいた治療と予防を大切にしています。
まずは初診での検査・リスク評価からお気軽にご相談ください。あなたの歯を、一緒に長く守っていきましょう。
歯科医院でできる歯周病予防
早期発見・早期対応により、進行を防ぐことが可能です。
定期的な歯周病検査(ポケット測定など)
プロフェッショナルクリーニング
(スケーリング・PMTC)
ブラッシング指導
リスク評価に基づく個別の予防プログラム
自宅でできる歯周病予防
歯科医院で指導された正しいセルフケアを継続することが、予防の基本となります。
毎日の丁寧なブラッシング
(フッ素入り歯磨剤の使用)
フロスや歯間ブラシによる歯間清掃
禁煙
バランスの良い食事
ストレス管理